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グラスを受け取り、躊躇う事なく口をつけた。
甘い。甘くて、柔らかくて、でもすっきりしていて飲みやすい。バーで渡される苦いばかりのお酒とは全然違う。いくらでも飲んでいられそうだ。
「おいし……」
知らず知らずのうちに表情も緩んだ。
「良かった。でも乾杯くらいしようぜ」
「え?」
「ほら」
開堂はそう言って自らのグラスをユキの方へと向ける。これでいいんだよね? ユキが戸惑いながら真似すると。
「乾杯」
グラス同士がカンッと高い音を立てた。
開堂はそのままグラスを口へと運ぶと、ビールを一気に喉に流し込む。
グビグビグビ。喉仏の上下と共にそんな音が聞こえてくる。
ーーお酒ってこういう風に飲むの?
呆気にとられている内に半分以上が消えてしまった。そして。
「あーっ! やっぱこれだなっ!」
開堂はグラスを置くなり大きく唸った。その表情は眩いばかりの笑顔だ。
「そんなに美味しいの?」
「ああ。最近はアルコール度数の高いウイスキーとかばっかでチビチビ飲まなきゃなんないからな。あれどうにかならないのか?」
「さあ?」
それだけ答えて、ユキも再びグラスを手に取った。
そうか、アルコールが高くないお酒はああ飲めばいいんだ。開堂に倣ってカルピスサワーを一気にあおる。
「おい、無理すんなよ⁉︎」
慌てたような、驚いたような言葉は無視だ。
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