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冷たくて心地いいお酒が喉を潤す。
お酒なんて今まで苦くて不味いものでしかなかったのに、これはすごく美味しい。一瞬でグラスの三分の一程がユキの中に消えた。
「おいおい、いい飲みっぷりだけど大丈夫か?」
「へーき」
「空きっ腹で飲むとよくないから、ちゃんと焼き鳥も食えよ?」
「ん」
勧められるままに、ちょうど出てきた一皿目の焼き鳥串に手を伸ばした。これも組織で出てくる食事とは全然違う。温かいどころか熱いくらいで、お肉がプリプリしていてすごく美味しい。美味しすぎて口の中全体にじんわりと焼き鳥の味が広がっていく。頬まで緩んでしまう。
「旨いか?」
「うん」
否定の言葉なんて出てこない。近くにこんな場所があるなんて知らなかった。
ガヤガヤした店内。ここにいる人達は皆楽しそうで、出てくる料理は温かくて美味しい。こんなに近い場所にあるのに、まるで別世界だ。
「あと何食べたい?」
「……おっさんに任せる」
「りょーかい。すみません、ハラミステーキと厚切りたん串!」
「はい! かしこまりましたー!」
素知らぬ表情を装いながらも、次の料理が楽しみで仕方なかった。
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