二、

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 文字通り手を取り合ってやって来たのは工場街の外れに一軒だけあるホテルだ。看板には薄ピンク色の明かりが煌々と灯り、そういう目的の場所だと知らせてくれる。  そこに入るまでお互い何も喋らなかった。ただ手を繋いで同じ場所に向かって歩いていただけ。そして雪崩れ込むように部屋に入った瞬間、ドアに押しつけられるように抱きしめられた。 「引き返すなら今だぞ?」  耳元で囁く声はいつもとは全然違う。低く掠れたような声と吐息に、自分でもわかるくらい心臓が跳ねる。 「ううん」 「……先にシャワー浴びるか?」 「……うん」  小さく頷くと、抱擁が解かれる。それを少し残念に思っていると、優しく背中を押された。  シャワーを浴び終わると、入れ替わるように開堂が風呂場に向かった。  とりあえず置いてあったバスローブを着て、ベッドに座ってみる。  こんな時どうしたらいいかなんて習ってない。ターゲットを油断させて物や命を奪う術は学んだけれど、待ち方なんて教えられてない。下着は着けてるべきか脱ぐべきか。買い物に出る前にもシャワーは浴びていたけれど、髪ももう一度洗うべきだったのか。  落ち着かなくてベッドの淵から投げ出した足をパタパタ動かしてみるけれど、名案は浮かばない。
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