二、

25/38

374人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ
 開堂の体が離れ、ユキは腕で顔を覆った。頭が冷静さを取り戻していく。  ーーやっちゃった。  ーー組織に何て言い訳しよう。  考えるのはそんな色気も甘さもない事ばかり。でも後悔はない。  開堂はそんなユキの腕に触れ、気遣わしげに声をかけた。 「体は平気か?」 「平気」 「そうか」  そのまま腕をずらし、額に、頬に、目蓋に口付けを落としていく。こんな行為も知らない。 「痛くなかったか?」 「……うん」 「良かった」  タオルを持ってくるからな。開堂はそう言って一度ユキの元を離れた。何を持ってくるのかと思えば、お湯で濡らしたタオルで、それでユキの体を拭ってまでくれる。  一度タオルを受け取ろうとしたけれど、嫌か? なんて言って渡してもくれない。それも意味がわからなかった。  ある程度綺麗になると、開堂がシーツを変えたベッドに再び横たえられた。そして開堂は何故か隣に横になる。 「おっさん?」 「今帰っても同じだろ。泊まっていこうぜ」  開堂の表情は悪戯が成功した子供のように得意げで、さっきまでの扇情的な表情とはまるで違う。 「……困るんだけど」  ばれたら。 「ずっと飲んでた事にすればいい」 「私飲まないんだけど」 「俺が付き合わせた事にする。疲れただろ? 寝ようぜ」
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

374人が本棚に入れています
本棚に追加