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ーーどうしよう。
迷ったけれど、今から一人だけ戻るのも変だ。なら夜通し飲んでた事にするしかない。他に選択肢もなくて、目を閉じる。
人前で寝るなんて、殺してくれと言ってるようなもの。今まで誰かと同室で寝ようと思った事は一度もない。だけどもういい。目を閉じると同時に体の力を抜くと、あっという間に眠りに引き込まれた。
「ーキ」
「ん……」
「……キッ」
「……ん?」
「ユキ」
何度も呼ばれ、ハッと意識が覚醒する。目の前にあったのは。
「……おっさん」
開堂の顔だ。開堂は寝転がったまま、おかしそうに笑ってユキの顔を見ていた。
「朝だぞ」
「え?」
「朝八時だ。そろそろ出ないとな」
「……嘘……」
あまりの事に驚くと、開堂は体を起こしながら不思議そうに尋ねる。
「どうかしたか?」
「……こんなに、寝た事ない……」
「いつもどれくらい寝てるんだ?」
「二時間くらいで目が覚めるのに……」
「は?」
「いつもなら二時間くらいで起きるのに……」
もう一度呟くと、今度は開堂が驚いた。
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