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工場に戻ったら何て言おう。そんな不安は杞憂に終わった。
「……ぁっ、ね……」
「……おいっ」
「……ぅあぁ……」
扉を開ける前から漏れ聞こえる声に、自然と眉が寄る。
「どうした?」
「おっさん、帰った方がいいよ」
「え⁉︎」
ユキは戸惑う開堂をよそに、工場の中へと足を踏み入れた。扉を開けてしまえば、流石にわからないわけがない。ついてきた開堂も顔を顰める。
そして。
「おっ! ユキ、どこ行ってたんだぁー?」
「開堂! こっち、混ざりなさいよ!」
バーの扉を開けた瞬間立ち込める独特な匂い。バーは乱行場に様変わりしていた。
「ついに朝帰りかぁー?」
「……こうなってる気がしたから飲んでただけ」
馬鹿にするような表情を浮かべる男も。
「開堂、どーう?」
「いやっ……」
開堂を誘う女も。
「ねえっ! もおちょう、だいっ!」
「いいなあ、その顔!」
「こっちも向けよ!」
こっちに気付いてるのかいないのか、行為を続ける奴らも。誰一人まともに服なんて着ていない。まともな思考回路なんてしていない。
いつからこの状態だったかはわからない。昨夜はボスとスキンヘッドもいたから大丈夫だと思っていたのに、この有様。二人が帰った後に始めたんだろうけど、外で過ごして良かったと心底思う。
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