二、

27/38

374人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ
 工場に戻ったら何て言おう。そんな不安は杞憂に終わった。 「……ぁっ、ね……」 「……おいっ」 「……ぅあぁ……」  扉を開ける前から漏れ聞こえる声に、自然と眉が寄る。 「どうした?」 「おっさん、帰った方がいいよ」 「え⁉︎」  ユキは戸惑う開堂をよそに、工場の中へと足を踏み入れた。扉を開けてしまえば、流石にわからないわけがない。ついてきた開堂も顔を顰める。  そして。 「おっ! ユキ、どこ行ってたんだぁー?」 「開堂! こっち、混ざりなさいよ!」  バーの扉を開けた瞬間立ち込める独特な匂い。バーは乱行場に様変わりしていた。 「ついに朝帰りかぁー?」 「……こうなってる気がしたから飲んでただけ」  馬鹿にするような表情を浮かべる男も。 「開堂、どーう?」 「いやっ……」  開堂を誘う女も。 「ねえっ! もおちょう、だいっ!」 「いいなあ、その顔!」 「こっちも向けよ!」  こっちに気付いてるのかいないのか、行為を続ける奴らも。誰一人まともに服なんて着ていない。まともな思考回路なんてしていない。  いつからこの状態だったかはわからない。昨夜はボスとスキンヘッドもいたから大丈夫だと思っていたのに、この有様。二人が帰った後に始めたんだろうけど、外で過ごして良かったと心底思う。  
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

374人が本棚に入れています
本棚に追加