二、

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「お前も溜まんだろ? 女貸してやるぜ?」  一番手前に陣取る男は、何を飲んだらそうなるのか。舌なめずりし、興奮を隠し切れない顔でこちらを見る。 「あ、いや……」 「ユキ。てめえは……」 「わかってる。出てくるな、でしょ」  こういう時はいつもそうだ。終わるまで篭って、物音を立てない。散乱する衣服やゴミを踏みつけて、バーの中を進んだ。  そんな中でも背後で話は進む。 「何でユキは……」 「あいつがいると興醒めなんだよ! こーんな小せえガキの時から見てるからな」 「間違って傷でもつけたら商品価値が下がるってボスに怒られるしねー」 「は?」  開堂は二人の言葉に驚いたような、気の抜けたような声を出した。 「それより開堂の相手だったらしたーい!」 「開堂、ほら来いよ」  ーーどうするんだろう。  ほんの少しユキの歩くスピードが落ちる。そして。 「俺はいいわ。飲みにはまた誘ってくれ」  開堂はそう告げて、バーから出て行った。バーに残ったメンバー達は何だよ、つれないな、なんて残念そうに言葉を口にするけれど、ユキにとっては真逆。  良かった。ただ唇だけを動かして、部屋の扉を開けた。
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