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ユキは答えられるものは全て答えた。
開堂が知る組織の情報は少しずつ増えていき、それにつれてユキが渡せる情報も減っていく。それなのに。
「ユキ、痛くなかったか?」
「うん」
「ほら水。飲めるか? 湯船入れてくるからな」
「ん」
開堂は優しいままだ。
一緒に湯に浸かって微睡んでいると、ユキの頭に顎が乗せられる。まるで恋人のような甘い雰囲気に、胸が高鳴る。このまま時間が止まればいいのに。
でも、それも束の間。
「なあユキ」
「ん?」
「子供の頃からいるってどういう事だ?」
また、この話題に触れてきた。
「さあ?」
「自分の事だろ? どうして犯罪組織に入る事になったんだ」
「……そんなの聞いてどうするの」
「……もしユキが好きで組織にいるんじゃないんなら助けたいんだ」
本当はそれにつづり付きたい。でも、そんなの最初から無理に決まってる。
「それ。私以外に言ってら始末されるよ」
お決まりになってしまった台詞で流す事しかできない。
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