二、

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 今日もいけない事をした。  今日の任務は組織が運営している金貸しの事務所に行って、不正がないかを確認する事だ。困っている人に暴利をふっかけて金を貸し、貸した何倍もの金を搾り取る。絶対に逃がさないし、どんな事をしてでも資金は回収する。  払えなくなった人達の末路は悲惨なもの。若い男は強制労働、若い女は売春所。それ以外の人達の行方は知らない。でも、ただ殺しているなら優しいもの。きっと、親族・友人どんな繋がりを使ってでも回収してる。  事務所では借金を返せなくなった人が袋叩きにされていた。確かにこの目で見たのに、見て見ぬふりをして、作業を続けた。助けなきゃ死ぬかもしれないのに。わかっているのに助けなかった。  それなのに。見捨てたのを見ていたのに。 「ユキ、どうした?」 「え……?」 「ぼうっとしてるから。もうあがるか?」 「まだ平気」  開堂は優しくしてくれる。 「そうか。外は寒いしあったまって帰ろう。ラーメンでも食べて帰るか?」 「ラーメン?」 「あ、女の子にラーメンはダメか」  困ったように眉を下げる姿は、おっさんなのに可愛いとすら思ってしまう。 「……ううん、カップラーメンじゃないラーメン食べたい」  開堂が組織に来て二ヶ月。外には雪がチラつき始めた。
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