二、

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 ラーメンを食べて温まってから帰ると、陽はすっかり落ちてしまった。昼間のうちは任務やら帰宅やら私用やらで外しているメンバー達が、組織に戻っている時間だ。 「お、開堂遅かったじゃねーか」  バーに入ると、酔っ払った男が出迎えた。スキンヘッドに次いで長くいるこの男。組織の中での力もあるだけに態度も大きい。ユキの表情が歪む。 「ああ、寒いからラーメン食ってきたんだ」 「ユキもか?」 「ああ」  開堂が頷けば、男がこちらを見る。まただ。またこの馬鹿にするような卑しい目。 「ユキ、良かったじゃねーか! いつも食べてる以外のラーメン食えて!」 「……うるさい」  低い声が出た。  こんな場所にいたくない。一刻も早く部屋に戻りたい。  男はユキのそんな想いを嘲笑うように続けた。 「ほとんどコンビニの握り飯とカップヌードルで生きてきたもんな? そういや最近肉付きが良くなったんじゃねーか?」 「……うるさい」 「金持ってねえんだから開堂の奢りだろ? 身体で礼くらいしろよ?」 「ねえ、うるさい」 「ヒョロガリで死にかけてたガキがなあ」 「うるさいってばっ!」  ユキが叫ぶと、男は「おー、こわ!」なんて笑ってみせた。勿論怖がってなんてない。馬鹿にしている事は明らかだ。 「どういう事だ……?」  ユキが言い返す前に、口を開いたのは開堂だった。 「死にかけてた? お握りとカップラーメン? 金を持ってない?」  どういう事だ?  開堂はまた声を震わせて尋ねた。
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