二、

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「何だ開堂、まだ知らなかったのかよ」  男は愉快そうに笑った。 「こいつ、最近まで奥の部屋でずっと飼われてたんだぜ?」 「は?」 「やめてよ!」  叫んでも止まらない。 「母親がヤク中でよ、こいつが生まれても届も出さねえで家に置いてたんだ。で、金ねえけどクスリは欲しいって代わりにこいつ持ってきたんだよ! 最初は臓器取り出して売る予定だったんだが、ボスが駒として育てさせたんだ」 「ねえっ!」  知られたくなかった事実がどんどん語られる。 「逃げ出す場所もねーし、逆らえば飯抜かれて拷問だって嫌って程教え込まれてっからな。絶対裏切らないってわけだ」 「そんな事教える必要ないでしょ!」  見る見る開堂の表情が変わっていき、ユキの手も僅かに震える。それでも、男は笑みを隠さない。そして。 「何でだよ。こっからが面白い話だろーが!」 「……面白い?」 「ああ! こいつの名前なんてさ! クスリの隠語だぜ⁉︎ こいつの母親がクスリ買う時に使ってた隠語がスノーだったから、そのままユキってつけたんだ! ウケるよな!」  一番知られたくなかった事を知られてしまった。
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