374人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ
「何だ開堂、まだ知らなかったのかよ」
男は愉快そうに笑った。
「こいつ、最近まで奥の部屋でずっと飼われてたんだぜ?」
「は?」
「やめてよ!」
叫んでも止まらない。
「母親がヤク中でよ、こいつが生まれても届も出さねえで家に置いてたんだ。で、金ねえけどクスリは欲しいって代わりにこいつ持ってきたんだよ! 最初は臓器取り出して売る予定だったんだが、ボスが駒として育てさせたんだ」
「ねえっ!」
知られたくなかった事実がどんどん語られる。
「逃げ出す場所もねーし、逆らえば飯抜かれて拷問だって嫌って程教え込まれてっからな。絶対裏切らないってわけだ」
「そんな事教える必要ないでしょ!」
見る見る開堂の表情が変わっていき、ユキの手も僅かに震える。それでも、男は笑みを隠さない。そして。
「何でだよ。こっからが面白い話だろーが!」
「……面白い?」
「ああ! こいつの名前なんてさ! クスリの隠語だぜ⁉︎ こいつの母親がクスリ買う時に使ってた隠語がスノーだったから、そのままユキってつけたんだ! ウケるよな!」
一番知られたくなかった事を知られてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!