二、

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「チッ可愛げのねえガキだなっ!」 「そうしたのはあんた達でしょ?」 「けっ!」  それきり男は足音を立てて、自室のある二階へと引き上げて行った。  残されたのは何も言わない開堂とユキ。ユキも無言のまま自分の部屋に引き上げようと歩みを進めた。でも。 「ユキ!」 「……何?」 「話がある」  開堂が片手を掴んで引き留めた。 「……わかった」  小さく了承の言葉を口にすると、そのまま手を引かれ、外に連れ出される。そして、ついさっき乗って帰ってきた車に誘われた。 「……さっきの話は本当なのか?」 「何が」 「ユキが子供の頃……その、お袋さんにクスリと引き換えにされてここに来たって」 「本当だけど? それが何か?」  あえて冷たく返すと、開堂は固まった。 「それが聞きたかったの? ならもう帰っていい?」  話したところで過去や現在が変わる事はない。なら話す意味がわからない。 「待て。誰かに助けを求めなかったのか?」 「誰に?」 「え?」 「誰に助けを求めるの? ここにいる奴らは全員組織のメンバーなんだけど? こうやって自由に任務に行くようになったのは最近。それまでずーっとこの建物から出された事なんて一度もないんだけど、どうしろと?」
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