二、

37/38

374人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ
 ホテルについて、ユキは何も言わずに服を脱いだ。  ユキが何も言わなければ、開堂も諦めて何も発さない。  大きな手が、ユキの体を這う。  体中を撫でられ、口付けられ、溶かされる。  まるで微睡んでいるかのように、何も考えられなくなる。  愛撫はいつまでも終わらない。  蜜が滴り足を擦り合わせると宥めるように足を撫でられる。下に行こうとする頭を引き寄せる事で止め、首に手を回すと甘やかすように口付けられが降ってくる。  開堂が中に入ってくるのは、ユキの全身に力が入らなくなってからだ。  これがいつの間にか当たり前になった。 「ユキっ……もうっ……」 「ぅんっ!」  ホテルに来て初めての言葉。それを返した瞬間、最奥に熱いものが叩きつけられる。そして。 「ユキっ……」 「おっさ……」  お互いの名前を呼んだ瞬間、体は弾けるように反り返り、目の前が真っ白になる。荒い呼吸以外、何もできない。  力なくベッドに沈んだ。  開堂はそんなユキの頬をゆっくりと撫でた。 「ユキ、起きれるか?」 「……ん?」  これはいつも通りじゃない。いつもならもう少し寝かせてくれるのに。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

374人が本棚に入れています
本棚に追加