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「何……?」
「話があるんだ」
その声は今まで聞いたどんなものよりも真剣で。
「……うん」
起きないという選択肢は生まれなかった。
話。そうは言ってもここはそういう事を目的としたホテル。あるのは広いベッドと広いお風呂。そして真っピンクのソファーだけで、開堂はユキをそのソファーへと誘った。
「何?」
ユキが座っても、開堂は座らない。ユキの目の前の床に膝をつく。
「ユキ、俺と来ないか?」
「え……?」
「これ以上辛い想いをさせたくない。組織を出て俺と暮らしてほしい」
信じられないようなその言葉。あまりに現実離れしてる。
「……組織はどこまでも追ってくるよ? 殺されるまで逃げ続けるの?」
尋ねると、開堂の手が重ねられた。
「そんな生活させない。暫くは隠れていてもらうけどな」
「……じゃあどうやって生きていくの? 組織のお金を奪っていく? 厳重に管理されてるよ」
「違う」
「なら……また悪い事をしてお金を稼ぐ?」
「そんな事させないっ!」
否定の言葉を聞く度に、頭が冷静になっていく。
「どうして……?」
「俺はユキに日の当たるところで生きてほしいんだ」
「……戸籍もないのに?」
「それも、絶対どうにかしてやる」
「……そう」
無理だ。そう思った。
大体、そこまでして私を助けるメリットなんてない。なら考えられるのは一つだけ。
「今は言えないが、俺の本名も目的もちゃんと言う。だから信じてほしい」
「……うん」
きっと終わりが近い。こんな時にどうしたらいいかなんて習ってない。曖昧に口角を上げ、小さく頷いた。
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