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三、
ユキは自室に戻ると、簡易ベッドに身を預けて目を閉じた。
――何もわからない。
組織に入った理由も、こんな風に優しくする目的も、開堂の素性も何も知らない。
わかっているのは、あのガタイに一回目の殺人の速さ。一般人ではないという事と、理由もなしにこんな風に優しくする人はいないという現実だけ。
なら、知ればいい。息を吐きだして立ち上がる。
「お、どうしたー?」
都合のいい事に、バーには幹部は一人もいなかった。
「……次のターゲットの調査」
出かけるのはこういう時くらいだ。こう言えば誰も怪しまない。
「殺しかー」
「しくじんなよー?」
馬鹿にするような言葉には応えずに、奥の部屋へと歩を進めた。
奥の部屋はパスワードで厳重に管理されていて、入れるのはパスワードを知っているごく一部の人間だけだ。
パスワードは単独任務を与えられるようになってすぐに教えられた。絶対に裏切らないから。部屋を開けると、照明は自動で点くようになっている。
右側の壁には銃や刃物、毒薬が並び、左側の壁には埋め込み式の金庫。そして中央のコンピューターには今までの犯罪が全て記録されている。その中で、ユキはまっすぐに一台のパソコンに向かった。
新入りには必ず発信機をつける。組織に信用されれば外されるけれど、スキンヘッドはまだ疑っていた。という事はまだついている筈だ。
そしてその予感は当たっていた。
「あった……」
開堂の位置を示す点は都内一等地のレストランにあった。
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