三、

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 世間では今日は休日らしい。たくさんの家族連れやカップルが水族館を楽しんでいる。いつもなら遠い世界の話。だけど今日だけはその一員になれている気がする。  ――そう、今日だけ。今日だけだから、許してください。  あの日見た恋人の女性に心の中で何度も謝りながら。 「最後、竜宮館だって。ユキが好きな熱帯魚とかいそうだぞ?」 「……うん」 「行こうか」  最後の場所に進んだ。  竜宮館という名前がついたその建物は、名前の通り竜宮城をモチーフにしているらしい。さっきの水槽よりも少し大きい熱帯魚達が鮮やかなイソギンチャクの間から顔を出し、大きなウミガメが上空を飛び回る。夢物語のような場所だ。 「綺麗……」  水槽に手をついて、呟いた。 「だな」  開堂は優しく微笑んでユキの手に手を重ねた。 「楽しかったか?」 「うん」 「良かった」  まるで恋人同士のような一時だった。まるでいつも車の窓から見ていた普通の人達のような一時だった。こんな経験ができるなんて思ってなかった。 「心残りはないか?」 「うん」  自信を持って頷ける。 「ねえ、おっさん」 「何だ?」  水槽を見ながら話す様は、周囲の人からは恋人同士の取り留めのない会話に見えている事だろう。 「これ」  水槽についていた手を少しだけ動かすと、下に隠していたUSBメモリーが露わになる。開堂は驚いたようにそれに触れた。
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