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「それで話とは?」
「……その前に、一つ聞いてもいいですか?」
「何?」
この返事は聞き返すものじゃない。常に従順な私が『質問』をした事に対する不機嫌な何、だ。気が付かないふりをして、問いかける。
「昔、クスリの対価に私を引き取って良かったですか?」
「何だ、そんな事か。ユキ、お前は私の最高傑作だ」
「本当に?」
「ああ。幼い頃から鎖で繋いで社会と遮断し、選択肢を持たせなかった。戸籍も学歴も家もなければ、他で生きる術も知らない。そのお陰で、絶対に裏切る事もないし、必ず任務もこなしてくる。実験のつもりだったが成功だった」
ボスは昔から変わらないしゃがれ声で自慢げに笑った。
「……私って何ですか? 駒? 奴隷? 実験体?」
「いや……そうだな。言うなれば飼い主に忠実なペットだな」
「そうですか」
自然と頬が緩み、口角が上がった。それを見たボスの眼差しが訝しげなものに変わる。でももう遅い。
「お前……いつから笑うように」
その瞬間。
「なっ」
パンッ
ユキは最低限の動作で腰に差していた銃を構えると、躊躇う事なく引き金を引いた。弾は狙い通りにボスの右足を貫通する。
「ユキィっ!」
「……ボス、確かにずっと檻の中にいたら私はずっと従順だったと思います。でも、あなた達は外に出してしまった。外を見せてしまった」
「ユキっ、貴様っ!」
「あなたの敗因はペットに自我を持たせてしまった事です」
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