三、

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 銃声を聞きつけて集まって来たのだろう、外がだいぶ騒がしくなってきた。 「ボス! 大丈夫ですかっ⁉」 「くそっ! 開かねえっ!」  でも、今は昼真っ盛り。任務がある人は任務中だし、別に家がある人は帰っている。 「ちっ!」 「ロックは⁉」 「中からじゃねえと外れねえっ!」  いるのはここに住んでいる昔からの幹部達。巻き込んでもいい奴らばかりだ。 「あなたに命じられてたくさんの人を傷つけました」  次に狙うのは左足。  パンッ  こちらも一回で当たった。両足を撃ち抜かれたボスは、椅子から転がり落ちて床をのたうち回っている。でもまだ足りない。 「ユキ! やめるんだ!」 「たくさん、殺しました。悪い人だけじゃなくて、何の罪もない人も」  這って逃げようとするから次は右肩。  パンッ 「あぁああああっ!」  これも当たった。組織で鍛えられた腕でこの近距離。外すわけがない。 「ユキ! やめろっ痛いっ! やめ、やめてくれ! 自由が、自由が欲しいんだろうっ⁉ わかった! 自由にしてやる! だからやめてくれえっ!」 「ボス、あなたが言ったんじゃないですか。戸籍も何もない、他に生きていく術もないって。自由になったって仕方ないでしょう?」  次は左肩。  パンッ。  これはボスがのたうち回ったせいで掠るだけになってしまった。 「なら何が望みだっ! 何が望みなんだっ!」 「……もう悪い事をしたくない」 「やめっ、やめていいからっ!」
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