三、

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「……おっさん?」 「何であんな事をしたんだっ!」 「だって……自分で終わりたかったから……」 「はっ?」 「だって……渡せる情報は全部渡したし……もしおっさんがいい人なら……私、逮捕されて死刑になるでしょ……?」  言い切った瞬間、頬を包む手が震えた。そして、またこれでもかというくらい表情を歪ませる。 「そんな事させるわけないだろっ!」  吠えると同時に顔が近づいてきて、思わずぎゅっと目を閉じた。その時だ。 「はいはい、そこのロリコン野郎。ちょっと顔近すぎ。離れましょうねー」  第三者の声が開堂を止めた。  他の人がいるなんて全然気付かなかった。 「え……?」 「……何でいるんだよ」  しかも、その女性は。 「ずっといたっての!」 「暫く二人にしてくれ」  開堂が不機嫌を隠さずに接するその女性は、開堂の恋人だ。しかも、その声は最近聞いたばかりのもの。 「そんな事できるわけないでしょ! ここに入れてあげてるだけでも感謝してよ!」 「……ちっ」 「……組織に、いた……?」  扉の外で開堂を窘めていたあの声だ。ユキが掠れる声で尋ねると、女性は「ええ」と微笑んだ。
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