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ひとしきり泣いた後、今度はしゃっくりが止まらなくなった。
「ヒッ……ヒッ」
「ユキ、ほら」
開堂はそんなユキを抱き起こし、用意していた水をコップに移して飲ませてくれる。目の前で繰り広げられるやりとりに、歩佳は真顔で突っ込んだ。
「いや、コップ渡しなさいよ。何であんたが飲ませてるの」
「いいだろ別に!」
「はいはい。私から色々説明するから黙っててよ? まず、あなたが殺そうとしたボスはしぶとい事にまだ生きてる。あそこにいた奴らも一網打尽にしたから、意識が戻り次第逮捕して尋問していくわ。あ、逃げてる雑魚も今追ってるから」
「……はい」
――殺せなかったんだ……。
苦しませてから死なせたくて、わざと急所を外した。その結果がこれだ。
ユキが俯くと、肩を抱く手に力がこもった。
「ユキ。あんな奴お前が殺す価値もない」
「そうよ? あいつらが生きているうちに刑務所から出る事はまずないわ。あいつらはきちんと法の下に裁かれる。あんな所で楽に殺してあげちゃダメ」
物騒な事を言っているのに二人の口調は優しい。諭すような言い方に、首は自然に縦に動いた。
「よし」
「じゃあ次。これからの事を相談しましょ。通常、保護する時には施設に入ってもらうんだけどね」
歩佳はそう言って、クリアファイルに入った数枚の書類を取り出す。でもユキに渡そうとしたところで。
「ユキ、俺と暮らそう。な?」
開堂がそれを遮った。
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