三、

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 ――なら、どんな関係……?  開堂はユキの不安を察知したかのように、胸ポケットからクリアケースに入ったカードを取り出した。 「ユキ、これが俺の本名だ」 【身辺警護SPBG株式会社 警護特別室・室長 津郷幸広】  渡されたのは社員証らしい。開堂の顔写真と共に並ぶ文字を目で追うと、驚くような内容ばかりが飛び込んでくる。 「つごう……ゆき、ひろ?」 「ああ。こいつは上の妹だ」 「妹、さん……?」 「そうだ。警察の中でもやばい場所のまあまあのとこいるからな、色々融通を頼んでたんだ」 「元々この馬鹿兄貴も警察官だったんだけど、世話になった上司がこの会社立ち上げた時についていったのよ。で、その上司が追ってた事件が組織絡みだってわかって勝手に潜入しちゃってね。手伝えって私達に連絡寄越したのも事後報告」  言われてみたら二人の間に遠慮はないし、息もピッタリだ。でも、綺麗な大人の女性と無精髭が伸びたおっさん。容姿は全然似ていない。  ――潜入?  ――なら最初の殺しはどうしたの?  ――いつから助けようとしてくれてたの?  聞きたい事がたくさんあるのに、言葉が出てこない。それよりも何よりも、この綺麗な女の人がおっさんの恋人じゃない。その事実で頭がいっぱいになる。  ――それなら……それなら……。
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