三、

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 そして、幸広がくれたものはもう一つ。 「ただいま」 「あら。お帰りなさい、幸広、あかりちゃん」 「た、ただいま。お母さん、お父さん」 「お帰り」  お母さん。お父さん。この言葉を発する日が来るなんて思わなかった。 「これ土産」 「あらー今日歩佳も帰ってきてるのよ?」 「知ってる。さっきメールがきた。あいつの分も入ってる」 「そう。皆―、お兄ちゃん達がケーキを買ってきてくれたわよー」  こんな自分を受け入れてくれる人達がいるなんて思わなかった。 「まじ⁉ やった! あかりちゃん、行こ!」 「うん」 「歩佳姉―、お湯沸かしてー」 「はいはい! タカ、あんたは皿出してー」  急に随分年下の訳あり少女を連れて帰っても「あら、やっと娘が増えるのー?」で済ましたおっとりしたお母さんと、「大事にしろよ」だけで受け入れたしっかり者のお父さん。四人の弟妹達も歩佳から事前に説明があったからかあかりの境遇ごと受け入れてくれて。 「やば! ここの並んだでしょ?」 「ユキ君が美味しい所調べてくれたの」 「兄貴ほんっとマメだよなー。あかりちゃん、どれがいい?」 「えっと……名前が……」 「兄貴―、あかりちゃんどれ食べた事ないー⁉」 「苺のタルトが今のおすすめらしい。何個か入れただろ? それとモンブランはあかりのな」 「了解! じゃああかりちゃんその二つとって、残ったら兄貴に押し付ければいいよ」  優しくしてくれる。 「歩佳は夏休みとれそうか?」 「変な事件さえ起きなきゃとれそう」 「お父さんと幸広と、今年の家族旅行はグランピングなんてどうかって話してたの。あかりちゃん、バーベキューした事ないって言うから」 「グランピング?」 「優雅なキャンプの事よ。ご飯は外でお肉や野菜を網で焼いて皆で食べるの」 「豪華なテントで寝泊まりして、自然を楽しむの! 色々レジャーもあるし星も綺麗だよ!」  世間の常識も知らないあかりを、当たり前のように家族の輪に入れてくれる。
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