番外編

2/6

374人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ
 怪しまれるかとも思ったが、組織からの信頼は上がった。同時に少女との任務も増えていく。知れば知る程に少女は無垢だった。  不動産を買う方法は知っているのに、ケーキの名前も知らない。毎晩バーにいるようなものなのに、飲みやすいお酒の種類も知らない。焼き鳥の種類も知らない。お通しのキャベツすら大事そうに、嬉しそうに、美味しそうに食べる。  この姿に庇護欲を掻き立てられない男はいるのだろうか。  そして、好きで組織にいるわけじゃないとわかった時には、もう心は決まっていた。  近く組織は壊滅する。だが少女は傷つけたくない。  そんな自分の気持ちを察したかのうように、チャンスは少女の方から寄越した。  本人はうまく誘ったつもりだろうが、寄りかかってきた体は緊張で強張っていた。反応からしてラブホテルも初めてなんだろう。落ち着かずに辺りを見回す様は可愛らしくていくらでも見ていられたが、同時に男心をくすぐり過ぎる。少しでも緊張がほぐれるように色々な所を撫でながらも、逃げる隙は与えてやれなかった。  声を出さないように頑張る姿、それでも声が漏れて顔を赤らめる姿は今思い出しても興奮する。初めての痛みに涙を零す様は可愛くて、思わず涙を舐めとった。初めての行為で自分に縋り付く事しかできない少女に、わいてはいけない情がわいた。  それ、私以外には言わない方がいいよ。上に報告する事もできるのに、少女は何度となく俺を止めた。この子は好きで組織にいるわけじゃない。好きで犯罪を犯しているわけじゃない。  気づけばそれを言い訳に、少女を救う道ばかりを考えていた。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

374人が本棚に入れています
本棚に追加