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直線道路から反れた先にあるのはサービスエリアだ。
「少しくらい寄り道したって大丈夫だろ? 昼飯食べてないし」
開堂はそう言って、駐車場に車を止めた。
「まあ……少しなら」
何時に帰って来いなんて指示は受けてない。ユキが迷いながらも頷けば、開堂は車を降りる。
でも、一向に向こうに行く様子はない。
「……行かないの?」
「ユキが降りるの待ってるんだけどな」
「私も?」
「当たり前だろ⁉︎」
驚けば、驚かれた。
でも。ユキは自らの手元を見下ろした。サービスエリアでアタッシュケースはきっと目立つ。とはいえ車の中に置いていく事もできない。
「あー……」
ユキの考えに気付いたのだろう。開堂は戸惑いをみせた。
「私はいいから行ってきなよ」
「なら交代しよう」
「いい。いつも昼は食べないから。それより早く食べてきて」
静かに、でも淡々と告げれば、開堂は「わかった」なんて頷いて、小走りで駆けていく。
ーーこれでいい。
ユキはまた窓に体を預け、静かに目を閉じた。
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