番外編

4/6

374人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ
「あかりちゃんの母親、多分この人で確定。幹部共の証言と組織の名簿とも一致するし、当時赤ん坊の泣き声がしたっていう証言も複数出たわ」 「そうか」 「……本当に言わないつもり?」 「言ったところでどうなるって言うんだ。辛い過去を蒸し返すだけだろ?」 「そうだけど……」  捜査によってあかりの母親が判明した。案の定出生届すら出ていなかったが、病院の受診記録からあかりの誕生日もわかった。  母親の事はどうでもいい。母親は数年前に薬物で死んでいた。死人に口なし。既に死んだ二度と会う事のない存在には、あかりも興味すら抱かないだろう。  だけど問題は誕生日だ。若いだろうとは思っていた。想定はしていたが、あかりは未成年だ。本当の年齢を知った時、あかりはどう感じるだろうか。  俺との年齢差も一回りじゃきかない。政府の支援を使えば学校に行く事もできるし、そうなれば世界が大きく広がるだろう。  歩佳が言った刷り込みはまさにその通りだ。あかりには他に優しくしてくれる男なんていなかった。幼い頃から組織に繋がれ、ようやく任務で外に出れるようになっても、そこに楽しい事なんて一つもない。  そんな中に俺が現れた。  あかりは世界が広い事をわかっていない。あかりには無限の選択肢がある事をわかっていない。あかりならもっと年齢が近い男も、もっと顔がいい男も、もっと条件がいい男もいくらでも選べる事をわかっていない。  言うにはまだ早い。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

374人が本棚に入れています
本棚に追加