番外編

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 歩佳は俺の感情を読み取ったかのうようにため息をついた。 「あかりちゃんに包丁もガスコンロも使わないように言ってるんだって?」 「危ないだろ。俺がやるから問題ない」 「……家族旅行、すっごく楽しみにしてるみたいよ」 「ああ。バーベキューやレジャーの手配も俺がやっておくから希望があれば言ってくれ」 「……幸せにしてあげなさいよ」 「当たり前だろ」  とっくに溺れてる。  俺達は今日も抱き合って眠る。  毎朝目覚める度に一番にあかりのぬくもりを感じる充足感は言い表せない。  安心しきったあどけない表情。朝日を浴びて輝く髪。白くなめらかな肌。所々に咲く俺がつけた赤い花。女神のように美しい。  あかりが今も変化に戸惑い、終わりを恐れている事は知っている。だから何度だって伝えよう。 「愛してる」  耳元で囁くとあかりは目を覚まし。 「……朝……?」  とろけたような表情を浮かべて俺にすり寄った。 「ああ」 「……おはよ、ユキ君」 「おはよう。朝ご飯は昨日買ってきたパンだよ。スクランブルエッグと目玉焼き、どっちがいい?」 「あそこのパン美味しいから好き。……スクランブルエッグかな?」 「了解。今度の休みは都内のパン屋巡りでもしようか。それで大きな公園で食べたら美味しいぞ」 「うん……嬉しい」  この笑顔だ。この笑顔を守るためなら何だってしてあげたい。 「愛してるよ」 「……私も」  愛しい存在に触れるだけのキスを落とした。 【完結】
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