0人が本棚に入れています
本棚に追加
少し寒さが和らいだ3月下旬、母の49日の法要の日、僕は再び裏半球に行って49日の法要を執り行ったけれど、まだお墓がないため納骨を行うことはできなかった。
49日の法要が終わってから、僕は月奈と話をした。
「月奈、月奈が裏半球で暮らしたい気持ちはよく分かったよ!
そこで考えたんだけれど、僕が裏半球に移住しようと思うんだ!
僕にもお母さんのお店、手伝わせてもらえないだろうか?
スナックは、男の僕ではだめかな?」
僕が正直な気持ちを月奈に打ち明けると月奈が、
「男だからだめなんてことないよ!
お店をお兄ちゃんにも手伝ってもらえるなら、凄く助かるよ!」
月奈は満面の笑顔で僕に率直な気持ちを伝えてくれた。
僕は母のお墓を作ってもらうように石材店に注文し、月奈を残して一旦表半球に戻ることにした。
表半球に戻った僕は、会社の上司に事情を説明して会社を退職することにした。
また父と住んだ家は当面そのままにすることにして、運送業者に頼んで裏半球の母と月奈の家に引っ越しすることにした。
僕は裏半球に移住して、まずは月奈と母のスナックを開店した。
少しずつ常連のお客様が戻ってきてくれて、店は活気を取り戻しつつあった。
月奈は母の分まで頑張ろうと、お店では積極的にお客様の接客をして、お店の雰囲気を盛り上げているようだった。
僕は父と2人暮らしで家事を分担していたから料理ができるため、いろいろと試行錯誤してお酒に合う一品料理を作ってお客様に提供した。
お店を再開したばかりの頃は赤字だったけれど、お店は順調に売り上げを伸ばしていって4ヶ月後には何とか黒字にすることができた。
暑さが厳しくなってきた7月下旬、母のお墓が完成して納骨式を行うことになった。
お墓に行って骨壺に入った母の遺骨をお墓の下に埋葬して、月奈と僕はご焼香した。
僕は瞼を閉じてご焼香するとき母に、
「月奈と僕のことを天国から見守ってください。」
と心の中でお願いした。
僕が瞼を開けると真っ暗だった空に薄明りが差し込んでいた。
夜から昼になる場面でこのような光景を見るのは、僕が大学生の頃のことで6年ぶりだ。
月奈と僕がこの不思議な光景に驚いて空を見上げていると、光は少しずつ強くなっていって、やがて太陽が昇って明るい光が差し込んできた。
地球の自転がまた始まったかのようなその光景は、月奈と僕の新しい門出を祝うかのような出来事だった。
最初のコメントを投稿しよう!