夜の世界で生きる母と妹

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今は西暦2215年、地球は太陽に対して地軸が傾いた状態で自転しながら太陽の周りを回っている。 この自転速度は24時間だが、地球が西暦2200年を超えた頃から自転速度が遅くなっていって、西暦2209年にはとうとう自転が止まってしまった。 正確には、太陽の周りを回る公転速度と地球の自転速度が一致してしまい、地球は太陽に対して同じ方向を向いたままの状態で太陽の周りを回っている。 しかし地軸が傾いた状態で太陽の周りを回っていることには変わりがないため、春、夏、秋、冬の四季の季節は変わらずやってくる。 地球では太陽側を表半球と呼び常に太陽の光に照らされた昼間だが、太陽と反対側を裏半球と呼び太陽が隠れた夜となり、地球上の多くの人々は表半球で生活するようになっていったが、裏半球では犯罪が多発するようになり、いつしか犯罪者の多くが裏半球で生活するようになっていった。 僕の名前は『陽翔(あきと)』、4年制の大学を卒業して旅行会社に勤めている27歳の平凡な男性会社員だ。 僕の両親は僕が小学6年生の頃に離婚して僕は父に引き取られて地球の表半球で生活しているが、僕には2つ年下の『月奈(つきな)』という名前の妹がいて妹は母に引き取られて地球の裏半球で生活しているようだと父から聞かされていた。 僕の父は僕が25歳の頃肝臓がんになってしまい天国に旅立ったが、父はいつも母と妹のことを心配しているようだった。 僕は旅行会社に勤めている関係で、父が天国に旅立ってから僕は仕事が休みの時は、母と妹を探すために地球の裏半球に旅行するようにしていた。 僕は上司から地球の裏半球への旅行は危険だからやめたほうがいいと言われていたけれど、上司に家庭の事情を説明して月に2回程度地球の裏半球への旅行を繰り返していた。 2年間ほど経った今でも母と妹の所在はわからないけれど、僕はいつか母と妹に会えると信じている。 寒さが厳しくなってきた12月、街にはクリスマスツリーが飾られて賑わいを見せていた。 旅行会社では年末年始は休みを利用して旅行するお客様が多く繁忙期のため、僕達社員は年末年始前か後に5日間の冬休みを取得することができる。 僕の会社は週休2日制のため、この休みと冬休みをうまく組み合わせれば9連休にすることができる。 僕は12月5日から9連休にして、いつものように地球の裏半球に旅行に行くことにした。 地球の裏半球へは高速飛行艇を使って行くことができるため、僕は12月5日午後2時に地球の表半球を出発し3時間程で地球の裏半球に到着した。 早速僕は宿泊するホテルに移動してチェックインし、少しホテルの部屋で休憩してから夜の街に繰り出すことにした。
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