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戦争が終わったら、俺の顔の半分は、機械になっていた。
「……よお、イヴァン、気が付いたか?気分はどうだ?」
見覚えのある顔が、意識を取り戻した俺に呼びかける。奴は俺の艦隊で軍医を勤めていたミハイルだ。
……ということは、ここは軍の医療施設か。それはつまり、俺は生きているということだ。俺は漸くそこで、記憶の最後に残る閃光を思いだし、あの宇宙船の爆発の中、よく生き延びたものだと自分で自分の運の良さに感心する。
「まったくお前は悪運が強い。あの敵襲での生き残りはお前だけだ」
「そうか……皆、死んだか」
俺は、戦友たちの顔ひとりひとりを思い出しながら、呟いた。
「ああ、だがお前だって無傷じゃないぞ。いまは分からないだろうが、お前の顔の右半分は吹き飛んじまったんだ」
「そうか、じゃあ俺の顔は機械か……科学技術の発展に感謝だな」
「ああ、全くだ。特に特筆すべきは、お前の目だよ。お前の右目はいまや義眼だ。だが、見え方に遜色ないだろう?それは我が軍の医療陣が、数日前に開発に成功した特別な義眼だ。お前はその技術にあやかる第一号の患者ってわけだ」
「……ふん、つまり実験体というわけだな」
……俺はできる限り面白そうにそう言い放ってやった。
ミハイルはそんな俺を見つめると、肩をすくめながら病室を出て行った。
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