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翌日、俺は眼帯を右目に巻くと、昨日の街角に出かけた。勿論、落としてしまった義眼を探すためである。
子ども達は昼寝の時間らしく、うってかわって今日のその空間には静寂が支配していた。俺は街中に所在なげに佇み、さぁどこから探すべきかと途方に暮れる。
そんな俺に気づいて、またしても声をかけてきたのは、昨日の少女だった。
「軍人さん、また、どうしたの?何か用があるの?」
「ああ、君か。いや、実は、昨日倒れた際に落とし物をしてしまってな……」
「え?そうなの?何を落としたの??」
そう聞かれて俺は困った。
義眼を落とした、などと言ったら驚かせてしまうにちがいない。
こういうとき、どこまで正直に言えば良いものか。
「……それは君には関係ないことだよ。いいんだ、もうほとんど諦めているから」
俺は多少すまない気持ちになりながらも、少女に素っ気ない返事をして、その場を離れようとした。
が。なにかが俺の左目に留まった。少女の指先だ。そこには、見覚えがありすぎる薄いブルーの色彩があった。……つまり、俺の瞳の、虹彩の色だ。
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