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「君……その指先の……それは?」
「あ、これ?綺麗な石でしょ!昨日鉄くず拾っていたら、見つけたの。あまりにも綺麗だから、そのへんにあった針金で編み込んで指輪に仕立てたの!」
俺は言葉を失った。
どうやら俺の義眼は、路上に叩きつけられて割れた挙句、虹彩の部分だけが他のヘッド部分から外れてしまたようだ。そしてなんてことだ。石と間違えられてこの子に拾われた挙句、指輪になっているとは。
呆然とする俺の目の前で、少女はよっぽど気に入ったのか、キラキラ光る「指輪」を見せびらかしてみせる。
「……それ、そんなに気に入ったのかい?」
「ええ、生まれてこの方、こんな綺麗な石見つけたことないわ!」
少女は頬を高揚させ、指先を陽の光に透かしている。
俺は、それを見て、なんだか急にその少女を哀れに感じた。思えば、生まれて以来戦乱の世で生きてきて、綺麗な物とは無縁の暮らしを送ってきたのだろう。
……その子がやっと見つけた、美しい物を取り上げる権利が、誰にあるというのか。
「軍人さん、もう行くの?探しものは?」
「ああ、もういいんだ」
俺はそう答えると、杖を頼りにその場を立ち去った。
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