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……彼女が悲鳴を上げる。
「何をするの!!」
「……すまない、君の大事な指輪を……だが、あの「石」は危険なんだ。あれを持っている限り、君は彼らに追われる……」
「え……?どういうことなの??」
「すまないが、それを話している暇がないんだ」
俺はそう言いながらポケットの残りの札を彼女の手に、ねじ込んだ。
「……この街にいると、また狙われるかも知れない。この金で、行けるところまで行け……あと……」
そして、俺は反対のポケットに押し込んでおいたビロードの小さな箱を手に取ると、それも、彼女の掌に載せた。
彼女は震える指先で、箱をそっと開く。
なかには、金の指輪が収まっていた。輝く石の色は、薄いブルー。
「綺麗……軍人さん??これは……?」
「アクアマリンだよ……さっきの指輪のかわりだ。奪うばかりじゃ、君に申し訳がなさすぎるから……」
……柄にもないことをした俺は、それ以上言葉を上手く継げなかった。
それだけやっと言うと、俺は身を翻し、路地から去ろうとした。が、その腕を少女が掴んだ。俺の腕を彼女の熱が伝い、そして、か細い声が聞こえる。
「軍人さん、どこかに行くなら、私も一緒に連れて行って……片目だけどね、綺麗な色の目をした男の人だなあ……って、初めて会ったときから思ってた……」
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