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【1章】10 今日は早退
「「「「「「「「「「「「「「その『手刀』っていう聖剣どうやって手に入れた!?」」」」」」」」」」」」」」
デジャブを感じる発言が周囲全員から聞こえる。
なんで、俺に関する時に皆の気持ちって一致するんだろうね。
皆、今日が初見だよね?
現在はダンジョン近くまで進めてあった、戦車の少し後方で崎村1曹が中村3尉に報告をしている。
当然ながら、俺は近くに下ろしてもらっているのでお姫様抱っこ状態からは解放されている。
解放されるまでは招集者からはメッチャ笑われていたけど。
笑われるよりも、眼鏡をかけた女性招集者が物凄く興味津々な顔でこっちを見てたのが気になるけど、深く考えてはいけない。
クマを俺一人で倒したところで、全員からのツッコミである。
ちなみに、こういう時に突っかかってきそうなチャラ男 (仮)は俺の近くで沈んでいる。
俺が戻るまでの間に何かやらかしたのは、これまでの行動から想像に難くない。
「私も疑ったのですが、普通の右手で改造手術の経験はないとの事です」
いや、改造を普通疑わない!
と思ったけれど周囲で「改造もされてないのに……」という呟きが聞こえる。
改造って身近な話じゃないよね……
「ちなみに、こちらの武器はそのクマに効いたのか?」
「小銃もナイフも効きませんでした。ナイフは折れた事から我々の一般装備では太刀打ちできないと判断しています」
自衛隊のみならず周囲の視線が突き刺さる
『じゃあ、素手で倒したコイツはなんなんだ?』
誰も話してないのに、そんな言葉が伝わってくる。
仕方が無いので、俺は周囲の疑問を解消すべく口を開く。
「死後こうちょ」
「戦車の主砲はこれまで効果があるので、対戦車ライフルを試すべきだと自分は思っています」
俺の発言は崎村1曹に潰された。
ダンジョン内から、死後硬直についてはまともに取り合ってくれなくて悲しい。
「なるほど、装備の変更はすぐに行おう。しかし、クマを倒した方法と矛盾してるのがな…… まあ、いい理由は何かでっちあげるから、次は対戦車ライフルを持っていけ!」
装備を持っていくのにも現場の隊長だけで決めれないのか。
中村3尉は大丈夫そうだけど、こういう部分が原因で無駄に危険が増えたりする地域もありそうで怖い。
「姉崎士長、和田さんはどうだ?」
「触診した感じでは、右手も左手も改造されてないと思いますよ」
「違う!! いや、気になってはいたけど! 今聞いたのは和田さんの怪我の具合だ」
崎村1曹が中村3尉に報告している最中もずっと触診してくれていた、姉崎士長が明後日の回答を中村3尉に返していた。
天然なのかな……
可愛いい感じで天然とか、キツイ訓練のある自衛隊じゃ奇跡な気がする。
「私が診た限りでは問題になりそうな外傷や骨折はありません。しかし、痛みがあるのでレントゲンで神経等に問題ないか調べないと安心できません」
「では、和田さんに関して病院に行っていただく事とする。姉崎士長診療に同行しろ!」
病院に送ってくれるようで助かる。
姉崎士長は車を取りにキャンプ地の方に走っていった。
また、国策という事で診察等の割り込みをするように、中村3尉は病院に電話してくれている。
強制的に集められた事のせめてもの特権かな。
「和田さん、これ一応飲んでおいて下さい」
崎村1曹が酔い止めを渡してくる。
俺は酔わない方だから大丈夫だけど、崎村1曹が真剣な顔をしているので服用する事にする。
自分では殆ど動けない状態だから、車を汚すことを危惧したのだろうか。
「遅くなってしまったが、初回の探索ご苦労様。我々の想定ではモンスターが出没する事から、暫くかかると思っていた。予想を裏切って初回で1階の探索が完了したのはありがたく思っている。」
マジで死にかけたけどね……
「今回、判明した事は3つだ。
一つ目は、一階にモンスターは住み着いていないということ。
二つ目は、冒険者でも交戦して勝てる? と分かった事。
」
あれ、判明事項なのに二つ目疑問にならなかった?
ていうか俺の状態見て!
まともに動けない状態だよ!
勝てるというより生き延びた状態!!
「三つ目は、『冒険者カード』なるものが存在している事だ」
「「何ですかそれ!?」」
俺と崎村1曹の声が重なる。
他の面々は先に話していたようで、驚いた様子が無い。
更に、ラノベや投稿小説のような世界になっていっているな……
チャラ男 (仮)のペアが見つけたらしいが、未だにダウンし続けているチャラ男 (仮)を見ると『冒険者カード』役に立つものか疑問になる。
「まだ、調べている最中だがこんな物だ」
こちらに近寄ってきて、冒険者カードと思われる物を渡してくるので、崎村1曹に受け取ってもらう。
冒険者カードのサイズは免許証くらいの大きさだが、触るとホログラフのようなモノが浮き上がってきて情報が表示される。
何このハイテク感!
表示を見ていく
名前:木崎 茶楽
カナ:キサキ チャラク
「……誰のですか?」
「そこで寝てるスーツの男の物だ」
何度も心の中で呼んでいる内に忘れてしまったが、チャラ男 (仮)って俺が勝手につけた名前だった。
いつの間にか、本名と脳が勝手に認識してしまっていた。
と言っても、カナを見るとチャラ男もあながち間違ってない呼び方に思える。
再度視線をホログラフに戻す。
クラス:ノービス
上位転職可能クラス:『バンディット』、『シーフ』、『ダンサー』
上位可能なクラスについての特性情報と転職ボタンがある。
選び直しができないという注意書きもある。
下にはパラメータやスキル表示がある。
ますます投稿小説で見たような形になっている。
もしかして、クマってこのカードとってからだと余裕だったりするの?
「この冒険者カードについては現在調べている所だが、少し休憩した後に全員分を取りに行こうと考えている。クマの死体の回収問題もあるのでな。」
そう言ったところで、車のエンジン音が聞こえてくる。
「そういうことでしたら、今日再度行くのも仕方ないですね」
「いや、あなたは早退だ」
「待ってください中村3尉! 人手は多い方がいいですし、一度で終わらした方がいいでしょう!」
朝の気持ちはどこへやら、急にダンジョンに潜りたがる俺。
冒険者カードが手に入る!
湧き上がる少年心を抑えられるわけがない。
「怪我人を連れていくわけには……」
「自分の身はじぶ」
「はいはい、和田さん病院行きますよ~」
車から降りてきた姉崎士長に車まで引きずられていく。
女性に簡単に簡単に引きずられていくので、トレーニングって大切なんだなと感じながら、抗議をする。
「姉崎士長! 国の利益の為にもここで俺の戦力の増強をしておくべきかと!」
「カード取ったところで、満足に動けないから無駄です。今度一緒に取りに行きましょうね~」
まるで駄々をこねる子供をあやす様な口ぶりで、車に連れ込まれる。
若い女性に諭されるおっさん。
若干冷静になると、自分ですらスゴイ絵面だなと感じる……
もしさっきの様子を動画に取られてて、動画サイトに投稿されてたら死ねる!
ちなみに、俺に国の為に何かをするという精神は当然ない。
そんな精神を持ってたら、プロ自宅警備員になんてなってない。
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