【2章】4 仲間とのプレゼン

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【2章】4 仲間とのプレゼン

「と、まあこんな感じだ」 一昨日と昨日で仕上げた資料を見てもらいながら口頭で二人に説明をする。 床でだらけるような格好で説明したけれど友人同士なので許容範囲だと思う。 まともに動けないんだからしょうがないんだよ、うん。 月夜は内容を知っているので、資料のポイント等の補足を行ってくれている。 本来ならモックを作成して触ってもらいながらの方がイメージ湧くのだけれど、状況的に無理だったので文章と図のみになった。 ちなみにイメージ図も月夜に描いてもらったけれど、言葉では上手く伝わらず一番揉めた部分になった。 「確かに情報整備というのは必要だよな。 公式情報なんて出ないだろうしネットだと何を信じて良いのか分からない部分がある」 とユウが俺の提案への感想を言う。 「技術的なレベルで作れるかという部分では大丈夫だよ。 問題は実装までの期間と情報の付け方だと思う。 現在だと掲示板形式だけど適当なこと言う人いると思うんだよ」 システム周りに強いユキも感想を言ってくれる。 技術的には問題が出ないという部分は大きい。 「発信情報の信用の付け方はアッキーと話したけど、別紙に付けている方法のどれかがいいと思う。 マイナンバーよりも冒険者登録みたいなのをして冒険者限定の発言かつ身元も簡単に割れるようにするのが理想かな」 そういって月夜が情報をサポートしてくれる。 ちなみに今話しているメンバーは次の形になっている。 花村雄太(ユウ) 株式会社MAAZ 代表取締役 月村月夜 株式会社MAAZ 取締役 元村幸奈(ユキ) 株式会社MAAZ 取締役 和田明彦(アッキー) 元プロ自宅警備員 全員そうそうたる肩書となっている。 MAAZ自体はユウが立ち上げ、コアメンバーの月夜とユキはそれぞれ事業を持ってるというよりも、月夜が外交周りでユキがシステム周りをやっている。 ちなみに俺は違う会社に入っていたのでユウたちにクビにされたわけじゃない。 ユウとは高校のクラスメイトで、月夜とユキは大学の同期の関係だ。 「つまりその部分を会社として交渉して欲しいって事か」 「国公認のお墨付きが欲しいっていうのもある。 今の会社の状況だと難しい?」 ユウが自分のやる事の確認をしてくる。 内部がゴタついているのはこの前聞いているので、難しいという事かと思って確認をすると3人が顔を見合わせ 「「「タイム!!」」」 タイムと答えた……ってタイム!? 俺の気持ちをよそに3人は壁際に集まり何事かを相談し始める。 高校時代でユウ1人、大学時代では3人共に多くの時間を過ごし卒業後も無二の友人として関わってきたが、今日ほど疎外感を覚えた日はあっただろうか…… 一人だけ取り残された俺は仕方が無いので、痛みをこらえながら飲み物に手を伸ばす。 大きい動作は無理だが、痛みを堪えれば簡単な動作ができるようになったのは救いだ。 それでも我慢できるだけなので、ストレスが溜まる為なるべくなら動きたくないのだけど…… そんな気も知らずに尚も話し続ける友人たち。 …… ………… 15分後 「アッキー、就職する気はある?」 話し合いを終えて元の席に戻った3人の中から代表して、ユウがそんな事を言い出した。 今更俺に就職を打診するとはどういう事だろうか? 「さすがにMAAZには入れないだろ」 そうでなければ、俺だけ大卒ではなくあの時に揃って中退をしている。 「悪い言葉が足らなかった。 新しく立ち上げる会社に入る気はないか?」 「は? いや、わざわざ立ち上げる必要はないと思うんだけど」 「正直に言うと今のMAAZでやるには無理だ。 融資等のお金の部分を押さえている沙織の意見が強すぎて身動きが取れない。 ……業績の足を引っ張っているのもアイツのせいだけど」 「この前も愚痴ってたけど、僕らも今の状況をどうにかしたいと考えていたんだ。 でも、出資者がいる状態だと中々自分たちの都合だけで上手くいかなんだ」 あまり批判はしないタチのユキが、現状ではやろうとしても障壁が大きい事を告げてくる。 現状会社全体としてはギリギリ赤字にならない程度で、お金が必要な時には花村さんが都合してくるので花村さんが障壁となってるらしい。 会社の黎明期にはそういうお金のおかげで運転資金確保できたわけだけど、今となっては害でしかないな…… 「私たちとしては会社を新しく立ち上げるタイミングを考えていたのだけど、今のタイミングが一番いいかなと思ったわけ」 「新会社を立ち上げる一番の問題は先見性のある事業が必要という点だった。 資金面は俺や月夜が今までの付き合いを当たれば多少なんとかなるが、それでも先の目が無いといけなかった」 そこで降って湧いたのが今回のダンジョン騒動に関係する今回の提案だったようだ。 単純に俺が死にたくない一心だったんだけど、予想外の所に大きな波紋を立てていたみたいだ。 そう言う話があったんなら月夜も事前に言ってくれればいいのに。 「それなら入ってもいいけど、すぐに対応できるのか?」 「取り合えず僕だけは、アッキーの仕組み作りにかかりきりになるよ」 「俺と月夜は暫くは掛け持ちみたいになる。 会社としての調整もそうだけど俺たちが作った事業の社員対応も必要だしな」 転職斡旋はするけど、新会社は他に人を入れる気がないようだ。 人が増えて面倒になるよりも昔のように楽しくやるのを優先するつもりらしい。 俺としても人間関係の面倒な所は嫌なので助かる。 ん? 待てよ? 入社ということになれば、そもそもダンジョン行かなくていいんじゃね!? 「ならば、俺もダンジョンなんて行かずに事業の形づくりをしないといけないな!」 「「「アッキー (明彦)、何言ってんの?」」」 うん、何でそんな疑問がでるのか俺の方が疑問だ。 ユキだけ俺の事を名前で呼ぶので、微妙にずれるがハモって疑問を投げかけてくる。 「アッキー、勘違いしているといけないので言っておくけど。 この話について一番重要なのは俺たちじゃない、アッキーだ」 「は?」 「起業していた信用みたいなのは俺たちにあるかもしれないし、構築できる技術もある。 だけど結局は役所から見れば数ある企業の一つでしかない」 まあ、役所取引とかしてないから尚更そう思っているかもしれない。 「反面、今現在冒険者を抱えている企業がどこにある? 俺たちしかいない!」 冒険者として招集される直前に再就職できなかったようなのしか残ってないし、一般的な社会人が危険もあるダンジョン探索に繰り出されるなんてことはない。 そんな事があれば、日々ネタを探しているニュースの恰好の的で一瞬で悪評がネット中を駆け巡るだろう。 「更にベアキラーという称号まで付いている! 各所から引く手数多の状況! この状態なら交渉も有利に立てる!!」 その称号本人認めてないんだけど…… 「「「つまり、アッキー (明彦)が冒険者辞める場合、事業自体がなりたたない!」」」 「いや、俺は既に数日休んでるし、皆は冒険者カード持ってるからその優位なくなってるんじゃないか?」 生き残ること以外考えてなかったので、苦し紛れに返答してみる。 月夜がスマホを操作して机の上に置くとL〇NE上でやり取りが展開される ツクツク: 冒険者カード取ったらクマって余裕だった? タマ: ヨユーでした! タツ: タマ……5が抜けてる タツ: アイツができたら俺ならできるって一人で殴りかかった奴は、クマに瞬殺されて今入院してるし 間違いなくチャラ男だろう。 タマ: 最低でも3人いないと怖いかな タマ: 速いし、力あるし タイチョー: 奴は化け物だ 「「「……」」」 無言で俺に向けられてくる3つの視線。 最早俺に冒険者から逃げる道はなくなった! むしろ悪くなった!! 前は単純に国が定めた基準を超えれば逃げる事も可能だっただろう しかし、現在はように道を埋められた…… さよなら……プロ自宅警備員生活……………… 目の端から熱いものが流れ落ちる
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