蓮の音 - はすのね -

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 学校に出かけようとすると、家の中に業者の人が入っていた。なにやらメジャーで寸法を測っている。私が戸惑っていると、ばあちゃんが教えてくれた。 「廊下に手すりを付けることにしたんや」 「そんな、ばあちゃん、足が痛いって言うけど、歩けんことないやん」 「じいちゃんの方や。歩く時につかまらんとフラフラするようになってな」  大人たちは、私には言わなかったけれど、去年からじいちゃんの具合が悪かったらしい。  確かに今年に入ってから、二回ほど入院している。その時、ガンだと聞いた。それにしても、つかまって歩かないといけないくらい、悪くなっていたのか。 「ほら、はすちゃん遅くなるやろ。ちゃんと自分で行かな。じいちゃんに送ってもらおうったって、あかんのやよ」  追い立てられるように、外に出た。  自転車を車庫から出す時に、通っていく車に鋭くクラクションを鳴らされる。右から来る車を確認していなかった。危ないところだった。  きっと私はかなり動揺していたのだ。  ペダルを踏みながら、ぼんやり気が付いた。
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