蓮の音 - はすのね -

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やっと梅雨が明けたと思ったら、太陽が待ってましたとばかりに、これでもかと照り付ける。くらくらするほどまぶしい夏空を見上げていたら、昔のことを思い出した。  小学生の時だから、十年ぐらい前だ。  夏休み直前の登校日は給食が無かった。汗をふき出しながら、カンカン照りの道を帰った。ランドセルの中には、今年こそ速攻で終わらせると決意した、宿題が入っている。両手に手提げバックや絵の具セットを持っていて、流れる汗をぬぐうこともままならない。セミだけが我が夏だと元気に自己主張している。風は怠けて、そよとも吹かない。 「ちょっと、休憩」 公園のフェンスに一人でもたれて座ると、タチアオイの花が見えた。ビラビラした赤い花が、背の高い茎のてっぺんに咲いている。母さんは、タチアオイの花が下から順番に咲いて、上まで咲き切ったら夏休みになるって言っていたけど本当だ。
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