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よく見ると、虹のそばにはうっすらと副虹まで見える。
屹立したオベリスクは、一瞬かっと煌めき、徐々に艶を失くしていく。そしてあっという間に、跡形もなく消え去った。
「あーあ」
ため息とも落胆ともつかない声が出る。
「仕方ない。もう日が沈んだし」
私はすぐに日没時刻を調べてみる。
「ほんとや。日が沈む直前のショーやったんやね」
「ショー?」
柿沢くんは眉をひそめる。
「うん。雨上がりで空気まで夕焼けに染まってて日が差した。いろんな条件が重なって、自然が見せてくれたショーやなって」
この奇跡とも言うべき現象に巡り合えた。その感動を表現したくて、言葉を選ぶ。
「まあ毎日見られるものでもないけど、別に自然は俺たちに見せようとして、そうしてるわけやないし」
それはそうだけど。私は少し鼻白む。
柿沢くんはカメラを片付けにかかる。
「待って。さっきの虹、見せてくれる?」
「え? ああ」
彼は画面に再生して渡してくれる。それは、虹の色を鮮やかに写し取っている。
「やっぱりカメラやと違うね。見た目通りに写ってる。これプリントアウトして、一枚もらえんかな」
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