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今はお店を継ぐ人もいなくて、次々と店舗を普通の家に建て替えている。その家の人はまだそこに住むけれど、郊外に新築して引っ越してしまう家も多い。更地にして駐車場になったところがあちこちにある。
家の前に、じいちゃんが立っている。夕方はいつも庭木に水を撒く。けれど今日は大雨が降ったから、開店休業というわけか。
「ただいま。じいちゃん、何してるん」
じいちゃんの、丸い顔にちょっと下がった眉が好きだ。私の小さめの鼻と薄い唇はじいちゃん似だと言われる。
じいちゃんは、その顔を憮然とさせる。
「何? 何? どおしたん」
「帰ってきたんなら、いい」
すると、中からばあちゃんが出てきた。
「ああ、はすちゃん帰ってきた。帰ってくるなら、電話一本入れてくれたらいいがの」
え? どういうことだろう。話が見えない。
「雨がひどくなってきたで、じいちゃんが学校まで、はすちゃんのこと迎えにいくって、今車を出そうとしてたところやわね」
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