蓮の音 - はすのね -

6/46

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
 今はお店を継ぐ人もいなくて、次々と店舗を普通の家に建て替えている。その家の人はまだそこに住むけれど、郊外に新築して引っ越してしまう家も多い。更地にして駐車場になったところがあちこちにある。  家の前に、じいちゃんが立っている。夕方はいつも庭木に水を撒く。けれど今日は大雨が降ったから、開店休業というわけか。 「ただいま。じいちゃん、何してるん」  じいちゃんの、丸い顔にちょっと下がった眉が好きだ。私の小さめの鼻と薄い唇はじいちゃん似だと言われる。  じいちゃんは、その顔を憮然とさせる。 「何? 何? どおしたん」 「帰ってきたんなら、いい」   すると、中からばあちゃんが出てきた。 「ああ、はすちゃん帰ってきた。帰ってくるなら、電話一本入れてくれたらいいがの」  え? どういうことだろう。話が見えない。 「雨がひどくなってきたで、じいちゃんが学校まで、はすちゃんのこと迎えにいくって、今車を出そうとしてたところやわね」
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加