2.

1/2
前へ
/17ページ
次へ

2.

「央、良かったな!」 食事後、風呂に入るため一旦自室に向かったときだった。2階の廊下で、後から追い掛けてきた佐野が、俺の肩に腕を回した。 「……何のこと?」 「何って、明希ちゃんのことに決まってんだろ? お前、顔に『好き』って書いてあるよ」 「――は?」 動揺したのは認める。だからって何でお前に言われなきゃいけねーんだよ! 「いや、あいつにそーゆー感情ないから。小、中一緒で安心感はあるけどさ、ちょっと口うるさいっていうか――」 「じゃあ、俺が立候補しちゃおうかな☆」 俺の釈明を阻む佐野の発言に、俺は揺らいだ。 「お前、何言ってんだ」 「これを機に仲良くなってさ、俺たち付き合っちゃったりして」 意地悪な笑いを浮かべた佐野は、冗談とも本気とも取れる未来予想図を口にした。俺の反応を見て楽しんでいるに違いない。 「勝手にしろ」 極めて冷静な声で応えたつもりだった。それが、かえって違和感を生んだ。 佐野の隣を歩く明希を想像すると、喉の奥がきゅっと締め付けられた。高校生なら、幼馴染み以外の男と歩いてもおかしくない。なのに、なぜか遠い存在に感じる。だって明希は俺の――。 たった数秒の想像だというのに、胸が重くなった。 これが高校生3年間続いたら、俺は。 「勝手にしろ」もう一度、吐き棄てるように言った。 ふーん、と佐野が気だるそうに坊主頭ををぽりぽりと掻いた。そのとき、先に部屋に戻っていた志築とすれ違った。 「お、志築サン。ちょうどいいとこに」 志築は華麗にスルー。それでもTシャツの裾を掴まれ、仕方なく立ち止まった。びくともしない体幹、うらやま!
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加