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8月も中旬に入った。
背番号発表前の、貴重な練習試合。
チャンスは突然やってきた。
相手は県大会の常連校、稲川高校。大会前の実力を占う、重要な一戦だ。
0対0で迎えた七回裏1死2、3塁、投手の代打に抜擢された。
一度ファウルを放ち、カウント2ー1のバッティングカウント。大丈夫、ボールは見えている。体も反応する。ドキドキよりもワクワクが勝っていた。
4球目が、きた。
打ったコースはやや外角寄り、低めのストレート。しっかり軌道を見極め、ポイントを引き付けて逆方向に押し込んだ。
鋭い打球が、浅めに守っていた三遊間を破る。
左翼手がファンブルしたのを見て、俺は一気に加速。一塁ベースの角を踏む固い感触が足裏から伝わると、素早く体重移動して二塁を陥れた。
審判が大きく手を横に広げると、ベンチで歓声が爆発した。
バットで球を弾く衝撃、スパイクが土を削る音――。一つ一つの記憶が体に刻まれる。嬉しくて、ベルトに挟まった土を払うふりをして、こっそり拳をつくった。そうしてしばらく、ベース上の光景に酔いしれた。
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