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皿を片付けていた午後9時過ぎ、明希と美智子さんがようやく帰ってきた。 2人は気丈に振る舞おうとしていた。 「今日はごめんなさいね」 平謝りする美智子さんに、3人でお悔やみの言葉を述べた。 俺は放心状態の明希に近寄った。 「おばあちゃん、大好きだったんだよな」 明希は突然、わっと泣き出した。 どうしたらいいか分からなくて、頭を優しくぽんぽんしてやる。思いがけず胸の中に飛び込んできた幼馴染みを抱え、つい俺まで泣きそうになる。 「子どもの頃、お料理を教えてくれたんだよな。ホットケーキとか、オムレツとか、楽しかったって――俺、ちゃんと覚えてるよ」 言葉の一つ一つに、明希は震えながら頷いた。思い出を共有する以外に、幼馴染みにしてやれることなんてなかった。 佐野も志築も、何も言わなかった。 次に言葉を発したのは、美智子さんだった。 「あれ――何か、いい匂い」 待ってましたとばかりに、佐野と志築が一つずつお盆を運んできた。 「2人のために、3人で作りました」 「いっぱい食べて、いっぱい泣いてください」 美智子さんは言葉を失って、黒いワンピース姿のまま椅子に座った。明希も隣に腰掛けた。 「オー、プン!」 恭しい佐野の掛け声を合図に、志築と俺がラップを外す。 香ばしい焼き魚の匂いが、食堂に漂った。
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