7.

5/5
39人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「わぁ」 メインは、表面をパリパリに仕上げたサバの塩焼き。程よい塩気と、たっぷり流れ出る魚油が食欲をそそる。 一口食べた美智子さんは、すぐに箸を置き、手で口元を抑えた。何度も何度も、何も言わず頷いた。目尻で光る涙の粒が大きくなって、やがてお盆の上に落ちた。 「……おいしい」 明希も鼻をぐずぐずさせながら、涼やかなガラス皿を手に取った。中心高く盛られたレタスとトマトのサラダは、あらかじめドレッシングの上から粉チーズを掛けてたんぱく質をプラスしてある。 「……私、いなくてもいいかもね」 泣き笑いする姪を見て、美智子さんは横から抱き寄せた。 「明希、素敵なお友達に恵まれて良かったね。おばあちゃんも、きっと喜んでるね」 美智子さんは俺たちに向き直り、明希そっくりの笑顔を咲かせた。 「皆、ありがとう」 いえいえ、と言いながら佐野が鼻をかんでいた。 美智子さんも差し出されたティッシュで目元を拭いながら、語りだした。 「私の母――明希のおばあちゃんは病気でね、もともとこの夏が峠だったの。それでこの子の両親が付きっきりで介護してたわけ」 「だからここに?」 明希は言葉を詰まらせながら大きく頷いた。 「私、寂しかったけど――皆においしい、ご馳走さまって言ってもらえて、幸せだった」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!