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「お前、何でそんなに打てんの」 シートノック前の小休止を利用して、部室で志築に訊いてみた。 「どうやったらあんなに――」 「努力」 補食用の巨大おにぎりを頬張り、必要最低限の返事しかしない次期4番候補。俺のクリームパンとサイダーを見て、それだけ?と呟いた。 「腹、減りそうだな」 自分の眉間に皺が寄るのを感じた。目の前で鮭の小骨と格闘しているイケメンフェイスに、パンを思い切り投げ付けたい衝動に駆られた。質問にはいい加減に答えておいて、人の飯の心配をするとは余裕じゃねーか! けれども俺は、冷静を装い、笑ってごまかした。 高校生にもなって、ましてやチームワークを重んじる場で、感情に流されるなんてご法度。こんなところでケンカしても何にもならない。こいつらはきっと中学の環境が良かっただけだ。指導者もカリスマで、いい道具を使ってたに違いない――。 卑屈な自分を、初めて知った。 今に見てろ。明希は絶対やらねーよ! そう思ってから、自分で自分を全力で否定した。 顔が紅くなっているのは、今日も日焼けしたからだ!
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