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4.
下宿に帰ると、明希お手製の夕飯が待っていた。今日は炊き込みご飯と鶏の照り焼き、あさりと小松菜の味噌汁、ナスのしょうが和え、サラダだった。
ものすごい勢いでおかわりを連発する佐野と志築を横目に、俺は箸を動かせないでいた。
「央、どした? 具合悪い? それともおいしくない?」
明希が心配そうに覗き込んできた。体調不良を疑われても仕方ないところ。しかし本当の理由は――。
「やだ、もしかしてまだ野菜嫌い克服してないの?」
明希の呆れ声に、同期2人と美智子さんが同時に振り返った。
「バカ、それ内緒だって」
「ほー?」
佐野が口の端にご飯粒を付けたまま、にやりと笑った。志築は興味がないとでも言うように、再びナスをご飯に乗せて食べ始めた。ひいぃ。恥ずかしいことを知られてしまった。
「野菜が嫌い、しょうがも嫌い、好きなのはご飯とお肉だけ。相変わらず、子どもみたい」
「朝昼夜、補食はパンかカップラだもんな。野菜が嫌いじゃ、しょうがねぇ」
「悠人くん、寒ーい」
そこ勝手にイチャイチャしないでくださる?
名前呼びかよ、いつの間に……。
2人に腹が立ったが文句も言えない。
実際のところ、下宿で提供される朝ごはんや弁当はきちんと食べている。
でも、それだけじゃ足りない。1日に何度も腹が減り、力が出なくなる。購買で買ったパンはあっという間に消化してしまう。結局、クタクタの状態で夕飯の白米と肉料理を待つしかなかった。
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