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「バランス良く食べないと、体が持たないよ?」
明希はおかわり用のナスが入ったボウルを抱え、志築の皿に追加してあげた。
「ほら、2人に差を付けられちゃうよ」
それは今の俺にとって、一番言われたくない一言だった。
「うるせぇよ。母さんでもないくせに」
「おい、よせ――」佐野が目で制してきたのは分かったが、言葉が口を突いて出た。
「野球なんか知らないお前に、何が分かるんだよ!」
ガチャン、と金属の不協和音が食堂に響いた。
ボウルをシンクに叩きつけた明希は、目を潤ませて台所を飛び出した。
あらあら、と美智子さんがうろたえた。
「央くん、ごめんなさいね、あの子ったら失礼なことを」
「いえ、俺の方こそ――」
言ってからふと冷静になった。
感情に流されちゃいけないと分かっていた。部室ではぐっと耐えられた。それなのに、ここでは言葉を飲み込めなかった。
やれやれと肩をすくめる佐野に聞きたかった。
俺は、どうして感情をぶつけてしまったんだ。
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