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食事後、佐野と志築が部屋に戻ったのを見計らい、俺はこっそり食堂に戻った。美智子さんは俺たちが使った皿を洗っていた。 「美智子さん、あの――」 どうしたの、と微笑んだ美智子さんがいつも通りで安心する。手をタオルで拭くと、先ほどまで座っていた椅子に座るよう促してくれた。 「さっきは、すみませんでした」 俺は立ったまま頭を下げた。 「つい『母さんでもないくせに』なんて言ってしまったこと、後悔してます。毎日愛情込めて接してくれる2人の前で言っちゃいけない言葉でした」 美智子さんは何も言わなかった。 「実際のところ母さんじゃないし、野球部のマネージャーでもないんですけど、だからこそ食事でサポートしてくれてるんですよね? 明希は明るくて、優しくて、頑張る子だって、知ってます。ずっとずっと好きでした。なのに、焦ってたせいで――明希にも謝りたいです」 そうねぇ、と困ったような声が返ってきた。顔を上げると、美智子さんはちらりと明希の部屋に続く階段に目をやった。 「私はいいの。慣れてるし、本当のことだから。でもあの子は、ちょっとショックだったかもね」 俺は背筋を伸ばして、深呼吸した。覚悟を決めると、再度勢いよく頭を下げた。 「お願いです!俺に『食べ方』を教えてください!」 食事を変えただけで、劇的に野球が上手くなるとは思えない。 だけど――背番号も明希も諦めたくないと、今ならはっきり言えるんだ。
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