心霊実話 カタカタさん

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 これは、わたしが数年前に体験した出来事です。  暮らしていた一軒家は古く、引き戸の多い間取りでした。  中でも引き戸がいちばん多かったのは、日当たりのいい縁側にそって作られた長廊下でしょう。離れへの渡り廊へつづくまっすぐな廊下には、そろいのデザインの雪見障子が八枚ほど並んでいました。    雪見障子というのは、障子戸の下段にはまったガラス窓から外を眺められるもので、我が家のものは着物のしぼのような模様の磨りガラスがはまっていました。  これがある日から、風もないのにカタカタ、カタカタと小さく揺れるようになったのです。  鳴るのはいつも、夜も更けてそろそろ床につこうかと家人が準備しはじめる頃あいでした。  時間は一定ではありませんでしたが、誰からともなく「これはおかしい」と気づいきました。  なぜなら、カタカタと音を立てるのは、並んだ障子のうちの一枚だけだったからです。もしも夜風が吹き込んでいるなら、全ての戸が同じように揺れるはずなのに。
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