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階段には血だけじゃなくて、切り刻まれた女の子の肉片があっちにもこっちにも飛び散っていた。
女の子は二階と三階の間の踊り場から転げ落ちそうな場所で、事切れたらしい。
以来女の子は、本来ならあるはずない十三段目の階段に取り憑いて、自分のなくなってしまったパーツを探してるんだそうだ。
十三段目に気づいてしまった生徒は、その女の子に失った身体の一部を持って行かれてしまうらしい、と。……な?小学校の七不思議の一つにしては、グロすぎると思わね?
なのにさあ、馬鹿っているんだよなあ。まあ、俺もその馬鹿の一人だったわけですけど。
人気者の男子のA、その取り巻きのBとC。それから俺。四人で、夕方こっそり学校に居残って階段数えてみようぜって話になった。そんなに怖い女の子の幽霊なら見てみたい、なんて不謹慎にもほどがあるのにな。小学生男子って、好奇心でそういうもんすぐ飛び越えちまうからさあ。
俺達は二階から横一列に並んで、全員で一段ずつ階段を登っていくってことをやった。声に出して、数えながらさ。ピカピカの階段が、綺麗な夕焼けの光に照らされてまるで小さなお星様みたいに光ってた。西日が少し暑かったけど、その場所はむしろ眩しいくらいで他の階段や教室よりずっと明るいほどだったんだ。
それなのに、階段を登るにつれ、なんだか俺は背筋がぞくぞくし始めたんだよな。このまま登っていいのか。本当に怖いことが起きないなんて保証はあるのか。そもそも、女の子に襲われて身体の一部を持って行かれそうになったら、一体どうやって逃げればいいのかとかみんなは考えてるのか。
思ったけど、言えなかった。本当に信じてるのか!とかビビリじゃん!って馬鹿にされるのが嫌だったから。
「十、十一、十二……十三!うっわ、すっげえ!マジで十三段あるんだけど!」
踊り場まで登りきったところで、Aが楽しそうに歓声を上げた。でも、俺とBとCは完全に固まったまま、その場から動けなくなってたからだ。
「何だよ、お前らどうしたんだ?」
まだ、Aだけが異変に気づいてなかった。俺は、震える手で、“そこ”と指差したんだ。
すぐに、Aも凍りつくことになった。
横一列に並んだ、俺達の左側。その隅。
十三段目にあたる、踊り場の左隅の壁に、黒い大きなシミのようなものがあった。
最初、俺はそれがなんなのかわからなかった。ピカピカの階段で、先生達も毎日掃除してるのに、なんでそこだけ汚れてるんだと思ったからだ。
でも、そのシミ。よく見ると、小さく動いてるんだよ。虫か、と思って目を凝らして見て、気づいた。見なきゃ良かったと思った。
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