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神様からの落とし物
雨は神様の落とし物だ。
僕の住む村には、古くからそういう言い伝えがある。贈り物、という表現をすることもあれば、しとしとと降り続く雨を神様の涙なのだと洒落込む言い伝えもある。
と、言葉はさまざまありながら、とにかく神様によって与えられる尊き水源である、という認識に違いはない。なぜならば、ここら一帯が農村であり、上流からの貴重な恵みによって、僕らの生活は成り立っているからだ。
水は、ありがたきもの。神様の落とし物、贈り物――。
大人たちは当然ながら、まだ子どもである僕にだって、この神様の落とし物がいかに大切なものであるかは理解できているつもりだ。僕らの命を繋いでいるといってもいいのだから。
そう、村のみんなが、迷うことなくそう信じていたのだ。
一年前――昨年の八月二十日という日が、やってくるまでは――。
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