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鏡の向こう
まこが、洗濯物を干していると、また、不思議なことが起こった。
女の子が、今度もまた、空から落ちて来たのだから……。
高校生から、20代くらいだろうか。
腰にとどくくらいの長さの、真っ直ぐな、
小豆色の髪をして、赤いワンピースに、赤いハイヒール。
それから、赤いリボンのついた、麦わら帽子が、一緒に風に舞って、落ちて来た。
今はもう、少し肌寒くなった、枯葉も乾いた秋なのに。彼女は、まだ夏支度なのだ。
彼女はしばらく、気を失っていたけれど、しばらくすると、気がついて、
「ここは、どこ?」と、まこに尋ねる。
「私も、わからないのよ。」と、まこは正直に答えた。そして、
「しばらく、休んでいけば?」と、彼女を家にいれた。
「あなた、名前は?」まこが聞くと、彼女は、自分の服を見て、
「紅子でいいわ。忘れちゃったから。」と、首を振って、
悪びれずに、言った。赤いマニュキアのついた指に、薔薇のような、香水の匂いもした。
「覚えているのは、昨日、顔を洗って、買い物に行こうとして、それから、鏡の前で口紅を落としたこと。」
王子が言った。
「それでは、君は、鏡の向こうの国から来たんだね。綺麗な髪だね。紅子は、小鹿姫みたいだね。」と。
「でも、僕の憧れの人はね、金色の髪に銀色の靴を履いていた……。」
残念そうに、「君ではないよ。」と、
王子は言った。
そこで、まこは、また王子の秘密を知ったのだ。まこが予想するに、王子は、王子の部屋にある絵本の中のお姫様に恋をしていて、
多分、お相手は、『オズの魔法使い』のドロシーだと。
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